調べ学習の成果を発表資料にしよう
夏休み等の自由研究や各教科における調べ学習を行う際,児童生徒による様々な取材活動が行われるが,そのような学習の過程では,先人が遺した文化や研究の成果を活かすことも多い。既に存在している文化的所産と自らの学びを区別して考える。
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教師・児童(生徒)の発問・発言例
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話を聞いたり資料で調べたりして分かったことをまとめたけど,これって私の研究?
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私は自分の意見も書き込んだよ。
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どこが調べたことで,どこがあなたの研究結果?
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思考を深めるためのヒント(アドバイス)
- 資料を調べることは重要だが,それを引き写すだけでなく,児童生徒なりに読み取って考えを整理させたい。
- 調べた資料や取材で聞き取った内容は,それらの情報源を示すことにより,発表資料としての信頼性が増したり,第三者が検証しやすくなるということに気づかせたい。
- 発表資料としての信頼性を確保するためには,調べた情報を勝手に加工すると逆効果になる場合もある。話をしてくれた人(作者)の考えや思いを大切にするべきであることに気づかせたい。
- 調査研究の結果,児童生徒自身が考えたことや分かったことは,他者の資料等に紛れ込ませないように表現の工夫をさせたい。
【自分でデータをとる場合に注意するポイント】
- データのとり方が正しいか(信頼性)
- 比較分析が可能な材料があるか(データを吟味・評価するため)
【既存の資料(公開情報や先行研究)を活用する場合に注意するポイント】
- 客観的な資料か(信頼性)
- 既存の資料に基づき,自分の課題が論理的に分析できているか(論理性)
- 適切に引用できているか(著作権)
討論などによって気づかせたいポイント
- 真似(丸写し)で発表してしまうことによって,児童生徒自身に知識・技能が身に付かずに自分自身が損をするだけでなく,その使い方によっては他人の創作物を盗んだことになりかねない(他人にも迷惑をかける)。
専門的な研究者ばかりでなく,行政機関や民間企業などでも貴重な成果を提供してくれている人がいる。
図書館の資料,行政機関のパンフレットやWebサイトなどの資料のほか,インタビューも有用な情報収集になる。 - 統計調査の結果などデータそのものに創作性はないが,それを何らかの目的を達成するよう学術的な表現上の工夫をすれば,児童生徒自身がその図表等の創作者になる場合がある(その創作行為に価値がある)。
- 「イラスト,無料,フリー」などで検索するとヒットするサイトを利用する場合,利用規定を読むことが大切で,サイトが提示した条件を了解して利用することによって「契約」が成立していることになる。
無料サイトだからといって,何でも自由に利用できる(権利が放棄されている)わけではない(一言で「無料サイト」といっても,サイトの運営者によって許容する範囲が異なることもある)。 - 取材した内容を協力者にチェックしてもらうことは,正確に理解することや適切にまとめることに資するだけでなく,相手に感謝の意を伝える機会にもなる。
先生のためのメモ(著作権の視点)
既存の著作物を発表資料に掲載することについては,原則としてそれらの著作権者から複製の許諾を得ることが必要ですが,授業の過程における調べ学習などの際には,例外的に著作権者の許諾を得る必要がない場合があります(学校その他の教育機関における複製等)。
論文,レポート,プレゼンテーション資料などに既存の著作物を利用する際,原則としてそれらの著作権者から許諾を得ることが必要ですが,授業の過程における利用でなくても,例外的に著作権者の許諾を得る必要がない場合があります(引用)。
「複製」をした場合に出所を明示することには,先行研究に対して敬意を払うという意味と,自己の研究成果を第三者(読者)が検証できるようにするという,二つの意味があります。
先生のためのメモ(著作権の視点)(共通編)
作品を「利用する」とは,著作権制度では の行為をすることを指します。
これらの行為をする場合には,原則として作者の許諾を得る必要があります。
著作権者本人と簡単に連絡がとれない場合,
①出版社などそのコンテンツを提供している会社に手紙を書いたり電話をかけたりして,その作品を利用したいという希望を伝えてもらう
②その作品の分野(漫画,写真,音楽,文芸作品など)ごとの作家団体に連絡する(その団体が作家に代わって許諾してくれる場合もある。
③Webサイトを通じて提供されているコンテンツの中には,「一定条件を満たす場合には,了解を得るための連絡をすることなく利用しても構わない」という意思で提供されているものがあるので,それぞれのWebサイトの利用規定などを調べる
④SNSを利用している作者であれば,ダイレクトメッセージなどでコンタクトをとってみる
などの方法があります。
著作物の利用について許諾を得るために作者(著作権者)と個別に交渉する際には,以下のような点をあらかじめ考えておきましょう。
- 利用したい行為(複製,演奏,公衆送信など)は何なのか(「あれもしたい,これもしたい」と幅広い希望を出すと,作者の立場では一般的には簡単に許諾したくないと考えるのは自然です。いろいろな利用が想定されているのであれば「あれもしたい,これもしたい」という希望を提示してもよいでしょうが,「どこまで利用するかは分からないけれど,とりあえず」という状況であれば,利用方法を限定して許諾を求める方が,許諾を得やすいでしょう。)
- デジタル媒体で利用するのか,アナログ媒体で利用するのか(作者の立場から考えると,許諾した場合,他の目的への転用,反復的な利用などが心配になります。他の転用がしにくい利用であれば,心情的に許諾しやすくなります。)
- 利用する著作物を提供・提示する範囲はどこまでか(学校の教育活動も地域社会と連携して進められる場面が増えており,地域社会に向けた情報発信も奨励されています。作者の立場で考えると,その著作物が無制限に(世界中に向けて)発信されるのか,学校内の閉じられた範囲に向けて発信されるのかには大きな違いがあり,許諾しやすいかしにくいかに影響する場合もあります。)
- 許諾の対価(使用料)はどの程度払えるのか(著作物の利用許諾に係る契約は「私契約」なので,その条件は当事者が交渉して決めることになります。)
作者の気持ちは様々なので「了解を得る方法」を法律などで限定的に定めることは困難です。技術の進歩や経済のグローバル化などの社会の変化に応じて関係者が話し合うことを通じ,著作者の権利を尊重しつつ,より円滑に利用できる(簡便に了解が得られる)方法を開発していくことが大切です。
例外規定(権利制限規定)が適用できない場合,著作物の種類によっては著作権の集中管理が進んでいるものもあるため,著作権等管理事業者に連絡することにより事務的な手続きにより許諾が得られる場合もあります。
著作権等管理事業者は,著作権等管理事業法の規定により,著作物を利用しようとする者に対して応諾義務を負っていますので,利用を拒むことはできません(通常,使用料規程に定められた額の使用料を支払うことが必要です)。
著作権(複製権,上演権・演奏権,公衆送信権などの財産権)については,権利が存続する期間(保護期間)が定められています。
著作権が存続している著作物を利用するために著作権者から許諾を得ようとしたにもかかわらず,著作権者の所在が不明で連絡が取れず,許諾が得られない場合には,文化庁長官の裁定を受けてその著作物を利用することができます。その仕組みをまとめると のとおりです。
教育活動の過程では,日本人が創作した著作物だけでなく,外国人が創作した著作物を利用する場合もあります。著作権に関する国際条約により,外国人の著作物であっても自国民の著作物と同様の条件で保護することになっており,それらの国際条約には多くの国々が加盟していますので,私たちが目にすることができる外国人の著作物のほとんどについて,日本国内で利用する際には日本人と同様の権利が認められることになります。
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